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「ブリーチ毛にパーマは無理」。そう言われて諦めていませんか? 現代の毛髪科学は日々進化し、適切な知識と技術を組み合わせることで、ダメージを最小限に抑えながら、ブリーチ毛でも美しく、もちの良いパーマをかけることが可能になりました。 今回は、ブリーチ毛パーマの成功を100%に近づけるための、より専門的なアプローチと薬剤の知識を徹底解説します。
パーマは、髪の内部にあるシスチン結合を切断し、ロッドでカールをつけた状態で再結合させることでウェーブを形成します。ブリーチ毛は、このシスチン結合がスカスカになっており、パーマ剤によるダメージを受けやすい状態です。そのため、使用する薬剤の種類や働きを理解することが不可欠です。
1. 還元剤の種類と反応部位
パーマ剤の主成分である還元剤は、シスチン結合を切断する役割を担います。それぞれの還元剤には、得意な反応部位があり、ブリーチ毛の状態に合わせて使い分けることが重要です。
* チオグリコール酸: 還元力が非常に強く、主にコルテックス内部のシスチン結合に作用します。健康毛や撥水毛に適していますが、ブリーチ毛に使用すると結合を過剰に切断し、ダメージを悪化させるリスクがあります。
システアミン: 還元力は中程度で、毛髪表面のキューティクル付近のシスチン結合に作用しやすいのが特徴です。ダメージ毛や軟毛に適しており、優しい仕上がりが期待できます。
* システイン: 還元力は穏やかで、シスチン結合の端に作用します。パーマのカール形成力はやや弱いものの、髪への負担が少なく、自然なカールをつけたい場合に適しています。
* GMT(グリセリルモノチオグリコール酸): 酸性領域で作用する還元剤です。アルカリで膨潤させずにパーマをかけることができるため、キューティクルへの負担が非常に少なく、ブリーチ毛パーマの主力として活躍します。
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スピエラ(ラクトンチオール): GMTと同様に酸性領域で作用します。特に疎水性の部分に作用し、GMTと組み合わせることで、より幅広い髪質に対応できます。
ブリーチ毛パーマにおいて、前処理剤はダメージの進行を防ぎ、パーマのカール形成を助ける「縁の下の力持ち」です。
* プレックス剤: パーマ剤による結合の切断を最小限に抑え、ダメージを予防します。代表的な成分には以下のようなものがあります。
* マレイン酸: 髪内部のシスチン結合の近くにあるアミノ基と結合し、パーマ剤による結合の切断を防ぎ、髪の強度を維持します。
* トステア(アミノエチルジスルフィドケラチン): 熱と結合することで、髪の内部に新たな結合を作り出し、ブリーチで失われた強度や弾力を補強します。
パーマの持ちと質感を向上させるトステア、PPT、CMCの役割
ブリーチ毛にパーマをかける際、薬剤の選定だけでなく、髪の内部構造を補強する処理剤の使い分けが、仕上がりを大きく左右します。トステア、PPT、CMCは、それぞれ異なる役割で髪を補修し、パーマの持ちと質感を向上させます。
1. 髪の骨格を再構築する「トステア」
トステア(アミノエチルジスルフィドケラチン)は、熱を加えることで髪の内部に新たな結合(架橋)を形成し、ブリーチで失われた髪の骨格を再構築する役割を担います。
* 役割: 熱反応を利用して髪の内部に結合を作り出すことで、ブリーチ毛の強度と弾力を劇的に向上させます。これにより、パーマのカールがダレにくくなり、もちが良くなります。特に、デジタルパーマやエアウェーブなど、熱を使うパーマとの相性が抜群です。
* 関係性: PPTやCMCが髪の隙間を埋めるのに対し、トステアは髪の芯そのものを強化するイメージです。スカスカになった骨組みを内側からしっかり補強することで、PPTやCMCの効果を最大限に引き出す土台を作ります。
2. 髪の隙間を埋める「PPT」と「CMC」
PPT(ポリペプチド)
* 役割: PPTは、タンパク質を低分子化した成分で、髪のダメージ部分に吸着し、失われたタンパク質を補給します。髪にハリとコシを与え、パーマ剤の過剰な浸透を防ぐ役割も担います。様々な種類があり、髪の仕上がりに合わせて使い分けます(例:ケラチンPPTはハリコシ、コラーゲンPPTはしっとり感)。
* 関係性: トステアが骨格を補強した後、PPTがその骨格の隙間を埋めることで、髪の密度を高めます。これにより、内部からのうるおいが保たれ、質感が向上します。
CMC(細胞膜複合体)
* 役割: CMCは、髪の細胞と細胞をつなぐ接着剤のような役割を果たします。特にキューティクルとコルテックスをつなぎ留め、髪の水分や油分が流出するのを防ぎます。CMCが失われると、髪はパサつきやゴワつきの原因となります。
* 関係性: PPTが髪の内部を埋め、CMCがその結合を強化することで、髪全体の構造が安定します。トステアで骨格を、PPTで密度を、そしてCMCでそれらを繋ぎとめることで、ブリーチ毛でも健康的で美しいパーマスタイルが実現します。
結論
トステア、PPT、CMCは、それぞれ異なるアプローチで髪を補強し、相乗効果を発揮します。トステアで芯を作り、PPTで隙間を埋め、CMCで全体をまとめる。この三位一体のケアが、ブリーチ毛パーマの成功には不可欠です。
ブリーチ毛にパーマをかける際は、単に薬剤を選ぶだけでなく、施術工程にもこだわりが必要です。
1. エアウェーブ+ダブルガラス化パーマ
この技術は、先にエアウェーブで髪の形状記憶を行い、カールをある程度定着させてから、GMTなどの酸性パーマ剤で再結合させる、という二段階のアプローチです。
* エアウェーブ: 温風と常温の空気の循環で、髪の内部に水蒸気を送り込み、カールの基盤を作ります。これにより、薬剤の力を借りる前に、髪に柔らかなカール形状を記憶させることができます。
* パーマ剤の塗布: カールの基盤ができたところに、GMTなどの低刺激な酸性パーマ剤を塗布し、シスチン結合を再構築します。これにより、しっかりとした弾力のあるカールが定着します。
この二段階のプロセスにより、薬剤によるダメージを抑えつつ、ブリーチ毛でもダレない、リッジの効いたカールを実現します。
2. クリープパーマ
クリープパーマは、1剤を塗布し、水洗後、放置時間を設けることで、残留還元剤が緩やかに反応し、より強いカールを形成させる技術です。
* 1剤塗布: 髪質に合わせて還元剤を選定し、塗布します。
* 水洗: 1剤を洗い流すことで、髪への負担を軽減します。
* クリープ: 放置時間を設けることで、水洗後も髪に残った微量の還元剤が、ゆっくりとシスチン結合に作用し、カールの定着を促します。
この工程は、特にリッジの甘いカールや、自然なウェーブを表現するのに適しています。
クリープにはゆっくり這うように進むという意味があり、残留物で少し軟化、還元を勧めます。
どんなに素晴らしい技術でパーマをかけても、日々のケアを怠るとカールはだれてしまいます。
* プレックス系シャンプー・トリートメント: パーマ後1週間は、プレックス成分や補修成分が配合されたアイテムで髪を洗うことで、パーマで不安定になった結合を安定させます。
* 洗い流さないトリートメント: 保湿効果の高いオイルやミルクをタオルドライ後につけ、ドライヤーの熱から髪を守りましょう。
* 正しいドライ方法: 根元からしっかりと乾かし、中間から毛先はカールを潰さないように、軽く握りながら温風と冷風を交互に当てて乾かすと、カールのリッジが綺麗に出ます。